Q:放射線は人体にどんな影響をあたえますか?
放射線が人体を透過するときに、そのエネルギーの一部は必ず体内に吸収されます。その吸収されたエネルギーが、細胞内の染色体に切断や突然変異 などの異常を引き起こします。これが放射線障害の根源です。
人の放射線障害で最も重篤なものは、発ガンと遺伝的影響です。発ガンのなかで最も重いものは、骨髄の被ばくによる白血病です。一方遺伝的影響は、生殖器の被曝による性細胞の遺伝子損傷が原因です。
細胞が放射線によって障害を受けても、それがすべて 発ガンや遺伝障害につながるとは限りません。生物すべてには、損傷した細胞を修復したり再生したりする能力があり、放射線に被ばくしたときもそれが 働きます。
医療被ばく程度の被ばく線量では、これまでの長期間にわたる精力的な調査にもかかわらず、発ガンも遺伝的影響の発生も積極的に証明できる結果は得られていません。 医療被曝については、心配しないで安心して検査を受けても 大丈夫です。
Q: 放射線を受けると寿命が縮むと聞きましたが、本当でしょうか?
ハツカネズミなどの動物実験では、確かめられています。しかし、動物実験の話が一人歩きしたもので、人間についてはこれまでも色々調査されてきましたが、寿命が短縮しているというデーターはなく、心配する必要はないと思います。寿命を短縮する原因は私達の日常生活の中に色々な形で存在 します。多くの原因がある中で、医療放射線による寿命短縮11日、自然放射線によるものは8日と推測されています。
Q: 放射線は体に残りますか?
放射線を浴びるということは熱や太陽光線をうけるのと同じで、身体に残ることはありません。
一方、アイソトープ検査というものがありますが、 これは放射線を出す薬品(放射性同位体)を身体の中に入れ、その放射線を外から測定して病気を診断する検査です。 この検査では一時的に放射性薬品が体内に止まりますが、短時間で消滅してしまう放射性同位体が使われていますので心配いりません。
Q: 自然放射線はどれくらいありますか?
自然界には宇宙誕生とともに自然放射線が存在し、その中で生物が誕生し進化して現在に至っています。現在地球上で日本より自然放射線量の多い地域は多数あり、数十倍を超えるところも少なくありません。
しかし、それらの地域でガンの発生率が高いとか、遺伝的障害が多いという報告はありません。 日本の平均的な自然放射線量は本ホームページの自然放射線と人工放射線のページを参照してください。
Q: 医療被ばくについてはどうでしょうか?
医療に使われる放射線と、自然放射線の性質は全く同じです。放射線診断に伴う患者さんの被ばく線量は放射線の影響が生じる可能性の ある線量に比べて低く、放射線の影響を心配する必要はほとんどありません。例えば、胸部エックス線検査と一年間の自然放射線による被曝線量は、それぞれ、0.05mSv、2.4mSvとなっており、一回の胸部エックス線検査の被ばく量は、一年間の自然放射線の約1/50です。
Q: 放射線を受けると不妊になると聞きましたが、本当ですか?
かつてはこれ以上子供がいらないと言う人のため、不妊することを目的として生殖腺への放射線照射が行われたことがあります。このためどの程度の 放射線で不妊になるかという事が、経験的に明らかになっています。放射線による不妊は、ある程度まとまった線量(しきい線量という)を浴びなければ決して 起きません。通常のエックス線検査においては、このような大線量を受けることはありませんので、不妊にはなりなせん。また、しきい線量は性別・年齢によっても 異なりますが、しきい線量を超える程度の被曝でも一時的に不妊になるだけで、後に回復します。永久不妊になるのは、もっと大線量の被曝をしたときです。
Q: 放射線を受けた人の子供や孫に、何らかの遺伝的影響は、ありませんか?
被ばくした本人でなく、その子供や孫の代になって現れる影響のことを遺伝的影響と言います。
結論から述べますと、放射線によって人に遺伝的影響が発生したという事実や証拠は得られていません。動物実験あるいは植物実験においては、放射線被ばくによる遺伝的な変化が明らかにされており、人でも発生すると考え、広島・長崎で原爆を受けた人々の子孫や、高レベル自然放射線地域にすむ住人、あるいは職業上放射線を受けた人の子供などを対象に、多くの 調査が行われていますが、いずれも自然の遺伝的影響の発生率より高まっているという、結果は得られていません。
Q: 何度もエックス線検査を受けていますが大丈夫ですか?
病気の診断や治療の経過を観察するためには、必要なことです。一回に受ける放射線量はごくわずかですので、妊娠中またはその可能性のある 女性以外は心配ありません。妊娠中、またはその可能性のある女性は、検査を受ける前に医師とよく相談して下さい。
Q: CTとはどんな検査ですか。エックス線を使うのでしょうか?
CTはコンピュータ断層法(Conputed Tomography)の略で、文字通りコンピュータを使って身体の輪切り(断面=断層面)をみる検査です。断層の情報を得るためにエックス線を使用します。エックス線源(エックス線管球)と検出器が向かい合った形になっており、それらがぐるりと身体のまわりを回り ながら信号を取り、身体の断面の画像が計算により作り出されるのです。エックス線の出口にはエックス線を透しにくい鉛の板を置き、エックス線を絞って いますので目的の断層以外は、ほとんどエックス線はかかりません。普通のCT検査では、一枚の画像を作る信号をとりだすのに、1秒から数秒かかり ます。そのあいだに身体が動くと画像が乱れるので、じっとしている必要があります。
Q: 毎年胃や胸部の集団検診を受けていますが、大丈夫でしょうか?
結論からいって、あなたが40歳以上なら心配する必要はないと、考えられます。胃の集団検診や胸部エックス線検査は、病気の予防、早期発見・早期治療 という立場から重要な検査です。集団検診はメリットとデメリットを考慮した上で、実施されるべきですし、現在、この二つを充分比較した上で行われています。メリットとは病気の予防、早期発見・早期治療につながるもの、デメリットとしては、放射線被曝による発ガンや遺伝的影響です。胸部エックス線検査による被曝線量は 自然放射線と比べてもかなり少なく、ほとんど問題にならないと思われますが比較的被曝線量が多い胃の集団検診については、メリットとデメリットが等しいのが 32歳と言われ、35歳からそのメリットの有意義が大きくなり、メリットがデメリットの3倍になるのが40歳と言われています。40歳以上の人は毎年集団検診を受けて、 病気の早期発見・予防につとめた方が、よいでしょう。
Q: 小児股関節(先天性股関節脱臼)エックス線写真を定期的に撮っていますが、大丈夫ですか?
経過観察のため定期的に撮影が必要です。小児股関節エックス線検査は診断できる範囲内で放射線を少なくしながら、生殖腺が被曝しないように男子では 睾丸に、女子では卵巣のある下腹部に鉛のプロテクターで覆ってエックス線写真を撮っていますので、発ガンや遺伝的障害の心配は、ほとんどありません。もちろん 子供ができなくなる(不妊)、というような障害は決しておきません。小児股関節エックス線検査による生殖腺の被曝量は、男児で0.002mSv女児で0.001mSvです。
Q: 妊娠中にエックス線検査を受けましたが心配ないですか?
小児が成人より放射線感受性が高く放射線障害を受けやすいのは、新陳代謝の盛んな組織・細胞が放射線に敏感だからです。放射線による胎児の 影響は、小児よりもさらに大きいとされています。また、それは妊娠期間によって異なり、初期妊娠ほど影響は大きくなります。国際放射線防護委員会(ICRP)では 妊娠する可能性のある女性は、腹部(生殖器)の被曝を受ける胃腸透視などの検査は、月経開始後10日以内に行うこと。また、妊娠かどうか判断できないときは 臨床上その検査がぜひ必要なとき以外は避けるべきだとしています。しかし、腹部以外の検査では生殖腺への被曝はほとんどゼロなので、そういった検査まで、 避ける必要はありません。
Q: 妊娠中骨盤計測のため、エックス線検査を受けました。大丈夫でしょうか?
骨盤計測エックス線撮影は、母体の骨盤の骨格、胎児の体位及び母胎と胎児の関係を見るために行われています。放射線が胎児に与える影響としては、 受精~9日なら胚死亡による流産。2~8週目の器官形成期では、奇形を生じさせる可能性。 8~15週目の大脳前頭葉の発育期では、発育遅延や知恵遅れを生じる可能性があります。しかしこれらの影響は、ある線量(しきい線量と言う) 以上の被曝をしないと現れません。そのしきい線量0.1Svです。つまり、0.1Sv以上被曝してはじめて 障害の発生する可能性が生じるということです。そして5ヶ月以降では、奇形や知恵遅れなどの障害は考えなくてもよいレベルになります。骨盤計測は2回撮影 しますが、この検査は妊娠後期に行われること、胎児の受ける線量は多く見積もっても0.001Svであることから、この検査によってお腹の子が奇形児や 知恵遅れになることはありません。その他の胎児に対する放射線の影響としては、発ガンと遺伝障害が考えられますが大人より放射線感受性が高いことを考慮に入れても、心配するレベルには達していません。
Q: 現在授乳中ですが、胸部写真を撮っても大丈夫ですか?
医療に利用される放射線は、母乳には全く影響を与えませんので、安心して検査を受け赤ちゃんに母乳を与えて下さい。 ただし、核医学検査を受ける場合は、医師と充分話し合って下さい。
Q: 2~3日前に同じところの写真を撮ったばかりですが、ここでまた撮影する のは、大丈夫ですか?(外来患者さんで他の病院から来られた方)
結論から言えば、病院で検査のために受ける放射線の量程度では、心配は、ほとんどありません。しかしどんなに少なくとも、放射線を身体に受ければ 確率的危険度が上がります。思ったように快方に向かわないからといって、あちこちの病院を回って、2度も3度も写真を撮ることは、 無駄な被曝を受けるだけですので、おやめ下さい。
Q: 昨日も写真を撮ったけれど大丈夫?(ポータブル)
充分注意して、必要最小限の放射線量で撮影していますので、心配いりません。経過観察のためにはエックス線検査は必要で、 この検査を行わないために診断がつかなくて治療が遅れたりする方がよっぽどこわいことです。
Q: 放射線を受けて最初に現れるのはどんな症状ですか。また、放射線を 多くあびると、どのようになるのですか?
- ・1~2Svで、悪心、吐き気、白血球・血小板の減少
- ・3~8Svで骨髄障害(造血・免疫系障害)で、感染や出血で死亡
- ・6~50Svで、腸管障害による脱水出血が起こり数日で死亡
- ・100Svで、脳浮腫などの中枢神経の障害を起こし死亡と報告されています。
Q: 胃の検査をするとき、なぜバリウムを飲むのですか?
胃は袋状の形をしており、その内側には多数のヒダがあります。腫瘍や潰瘍ができると粘膜ヒダに異常が生じます。胃に何も入れずに写真を撮る と粘膜ヒダどころか胃袋すら写りません。そこで、エックス線の吸収の良いバリウム(造影剤)とエックス線をほとんど吸収しない空気(発泡剤)をいれることによって、 胃にコントラストをつけて写真で見られるようにするのです。現在、胃のエックス線検査でバリウム以上の造影剤は開発されていません。つまり、バリウムは 胃エックス線撮影の立役者なのです。
Q: CT検査の時「造影剤」を注射されましたが何のためですか?
病変を明確に描出し、正確な判断をするためです。造影剤はエックス線を透過しにくいため、身体の中に注射することによってCT画像にコントラストがつき 見やすくなって小さな病変や広がりも判断が可能になります。
Q: エックス線検査で使用される造影剤の副作用は、どのようなものでしょうか?
病変を明確に描出し、正確な判断をするためです。造影剤はエックス線を透過しにくいため、身体の中に注射することによってCT画像にコントラストがつき 見やすくなって小さな病変や広がりも判断が可能になります。